トリヒナは感染症の運び屋
"人獣共通感染症"…一番身近な"獣"であるペットを飼っている人でも、約20
%程度しか、これらに対する認識を持っていなかった。蔑ろにされるが実は…。
【"人獣…"って、"トリヒナ"って?】
20数年前、私が大学で「畜産学」を学んでいた頃には、まだ、"人畜共通感
染病"と呼ばれていた。しかし、畜というのは、あくまでも"家畜"に限るという
意味に取られかねないので、現在は"人獣共通感染症"となっている。
先ず、
"人獣共通感染症"とは…人とそれ以外の脊椎動物の両方に発病の可能性があ
る感染症のこと。病原菌を持っている動物との直接
的に接触したり、糞、唾液、毛、垢、眼汁、鼻汁な
どを介して、感染が起きる。
このメルマガでも、以前取り上げた「BSE、人で
はCJD(変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)」「
(トリ、ヒト)インフルエンザ」「エキノコックス」
「狂犬病」などももちろん"人獣共通感染症"である。
病名は、ヒトと獣において、異なる場合もある。
「それでは、今回取り上げる"トリヒナ"とは一体何なのだろう?」
これも、"人獣共通感染症"の原因となる寄生虫の一つ。日本語では「旋毛虫」
といい、ぎょう虫や回虫が属する線虫類の仲間。青白く、成虫の体長=1.2
〜4ミリ、幼虫=1ミリ� �後と寄生虫としては、最小クラスである。
成虫は、寄生した動物の小腸で、幼虫を生む。この幼虫は、その動物(豚、熊、
猫、犬、狐、馬、鼠、アザラシ、セイウチなどの主に肉食あるいは雑食の哺乳
類が多い)の筋肉線維に、"被嚢"という袋を作り、丸まって留まる。
頭のてっぺんまでの平均馬の高さ
もし、ヒトが、この寄生虫のいる動物の肉を、生や加熱調理が不十分なまま
に、食すると「トリヒナ症(旋毛虫感染症)」罹患の可能性が出て来る。何故な
ら、幼虫はこの段階で、胃腸内において、被嚢から出て成長するからである。
*熱処理していない豚の「生ハム」「自家製ソーセージ」なども危ない。特に、
豚の飼料に生の肉片や残飯(衛生環境の悪いことが多い)を与えている場合は、
感染の危険性が高くなる。
「これらの基礎を踏まえて、今回、何故"トリヒナ"を取り上げたのか?」
【今回"トリヒナ"を取り上げた訳】
それは、北海道内で、ペットとして飼われていた"アライグマ"1匹が、トリ
ヒナ(旋毛虫) に感染していることが、確認されたからである。この調査は、江
別市にある酪農学園大・獣医学部の浅川助教授らの研究班によって行われた。
浅川助教授らは、北海道が駆除のために実施している捕獲事業で、2004
年4〜9月に、道央地区で捕らえられたアライグマ270匹を検査。
検査方法は、アライグマの舌を、特殊な薬品で溶かし、トリヒナの有無を観
察するというもの。この方法により、昨年6月、空知管内で捕まった一匹の舌
から、数百匹のトリヒナの幼虫が、発見された。
道や市町村が、2004年度に捕獲したアライグマは、約1,300匹。今
回、初めて、アライグマの感染が確認されたことで、浅川助教授は、捕獲した
アライグマの死体処理に、注意が必要だと指摘して� ��る。
「何故なら?」
死体を屋外で適当に放置すると、肉食獣やカラス、ネズミ、飼い猫や飼い犬
などが食べ、感染の拡大(ヒトへの感染も含め)が懸念されるからだ。また、既
に、野生動物の感染が広がっている可能性も、充分に考えられる。
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これまでの「国内の感染事例」としては、
頂芽優勢は何を停止することができます
●1957年…北海道の飼育犬から「筋肉トリヒナ」が初めて検出される。
●輸入動物のミンク(1957)、シロクマ(1960,69,86)、1986
年に、トラとクロヒョウから、感染が確認される。
●1974,75年…青森県岩崎村で、ツキノワグマの刺身を食べたハンター
15人の集団感染。
●1979年…北海道札幌市で、ヒグマの冷凍肉を食べた11人が集団感染。
●1981〜82年…三重県四日市市で、ツキノワグマの冷凍肉を刺身で食べ
た413人中172人が臨床症状を示し、その内、60
人が抗体陽性になる(国内最大)。
●1998年…青森県六ヶ所村で、捕獲したアカギツネから、トリヒナを検出。
●1999年…北海道小樽市で、捕獲されたキタキツネ5匹から感染を確認。
●2001年…北海道小樽市で、43匹のキタキツネと9匹のアライグマを検
査。5匹のキタキツネが、トリヒナに感染。アライグマは全て
陰性だった。
この事実から、キタキツネが"流行"に重要な役割を果たす「保
有宿主」である可能性が高まった。
そして、今回・・・
●2005年…北海道空知管内で、捕獲された1匹のアライグマの感染を確認。
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「危険なことは分かったけど、実際に、"ヒトが感染"したらどうなるの?」
【感染の"恐ろしさ"と防御策】
上記に挙げたような"怪しい肉"を食し、「トリヒナ症(旋毛虫感染症)」に罹
ってしまったら、どういう症状を示すのだろうか?死まで至るような重大な病
気なのかこれは!?
「トリヒナ症(旋毛虫感染症)」の症状は、侵入した幼虫の数、侵入部位、全
身の健康状態などによって、異なる。全く症状の出ないヒトもたくさんいる。
スカンクのスプレーの化学薬品を行う
汚染された肉を食べた1〜2日後に、微熱、腹痛、下痢などが見られること
もあるが、ほとんどの場合、幼虫の侵入による症状は、7〜15日くらい経過
しないと出ない。
主症状は、筋肉痛、脱力感、発熱、上まぶたの腫れ。筋肉の痛みは、息をす
る、話す、噛む、飲み込むなどの筋肉を使う時に、最も強く出る。かゆみのな
い発疹、下痢、更には、白眼の充血、眼の痛み、明るい光に対する過敏症状を
示すこともアリ。
治療をしなくても、感染後3ヶ月ほど経てば、大半の症状は消える。けれど、
何となく、筋肉が痛む、疲れやすいといった症状はしばらく続いてしまう。
外国では死亡例もあるが、一般的� �、死亡率は、非常に低い。しかし、稀に
肺炎や心臓不全を併発し、死に至ってしまう場合もある。一番の問題は、頻度
の低い"人獣共通感染症"のため、検査や診断に無知な医者が多いことである。
ただ、上記で懸念したように、爆発的に流行する可能性をはらんでいる。今
の内に、「トリヒナ症(旋毛虫感染症)」に対策を立てておかないと、手遅れに
なってしまうかも知れない(日本は"出てから対策"するのが常だから…)。
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[防御策と注意すべき点]
○豚肉や豚肉製品、それ以外の該当する肉に関しては、「約60℃以上」で、
充分に加熱調理する。生(刺身など以ての外)や半生で食べることは止める。
○−15℃で3� �間、または、−20℃で冷凍すると、一般的に、幼虫は死ん
でしまう。しかし、北極圏の動物に寄生する筋肉トリヒナの中には、−30
℃で36時間冷凍しても、感染性が保持される種類がいる。つまり、「冷凍」
ではなく、「充分な加熱」が一番の防御策である。
一口メモとして、宿主の筋肉内に、被嚢幼虫として、潜んでいる場合は、そ
の動物が、食肉にされない限り、6〜11年という長い寿命を持つ。
○犬、猫などのペットと「同じ食器」から、モノを食べることは絶対にしない。
○犬、猫などを戸外で、放し飼いにしない。野生動物の死骸などを食べること
により、感染の可能性が出て来る。この場合、犬、猫が「保有宿主」に。
○肉は新鮮な内に、食す(もちろん充分な加熱後)。冷凍保存を過信しない。
[治療]
◎「トリヒナ(旋毛虫)」そのものに関しては、メベンダゾールやアルベンダゾ
ールなどの駆虫薬の内服。
◎「筋肉痛」に関しては、対処療法として、安静にし、鎮痛薬で痛みを緩和。
◎「心臓や脳の炎症」を抑えるために、プレドニゾロンなどのステロイド薬。
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要は、新鮮な肉を「刺身で食べてぇ〜」とか「ちょっと半焼けの感じがいい
んだよなぁ〜」とか「肉はナマで食べないと」などというような通ぶったり、
危険を無視した傍若無人な欲望を少しだけ抑えることだと思う。
「これだけ、身近にある危険"人獣共通感染症"に対して、
貴方は、まだ、愛犬や愛猫と一緒の食器でモノを食べるのか・・・」
**備えあれば・・・
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